チェロの低音は近隣に響きます。コントラバスも特にそうですね。
ご存じの通り、エンドピンを伝って部屋全体に振動が伝わる楽器です。
普通の賃貸マンションの一室に、簡易的な自作の防音室を作っただけでは下の階や近隣に迷惑がかかりまくります。騒音問題です。
本当は、防音設備の整った部屋で フォルテッシモ(大音量)を出しての演奏こそが上達の鍵です。
ですが、都市部のマンション暮らしや仕事の都合で防音環境を整えられない方も少なくありません。
そこで私は、「できる限り音を抑えつつも、練習の質を落とさない」ために、自作・市販ガジェットを組み合わせた 防音対策セットを試行錯誤してみました。
他の記事でも実際の手応えや失敗も正直にレポートしていますので、ぜひご自身の状況に合わせて参考にしてください。
音大生の借りる防音室付き物件のような部屋に住んでおらず、普通のマンション住まいでチェロを弾きたいかた、都心や住宅地のかた、働いていて夜しか練習の時間が確保できないかた、左手の練習くらいは自宅でやりたいなぁ、、と社会人のみなさんは試行錯誤されていると思います。
ここでは、ご参考程度に少しでも防音出来るようなガジェットをご紹介。
洗濯機の脚用の防振ゴムマット
アマゾンでも、ホームセンターなどに1,000円以内でも売っています。
「振動」を防ぐための代物。
我が家にたまたま余っていたのは裏面がイボイボしているタイプです。

表面は網目模様です。

これまではこのゴムマットを床に敷いて、更にチェロ用エンドピンストッパーの「ブラックホール」を置きチェロのエンドピンをその上に乗せて弾いていました。
チェロのエンドピンは床を通じて建物を震わせることで部屋自体を楽器にして響かせるのだそうです。
今回は逆にエンドピンからの振動を床に伝わらせないようにしようという試みです。楽器には申し訳ない。ごめんね私のチェロ。
ゴムマットを魔改造して更に防振を強化
ゴムマットを2枚に重ねようと思います。
更に2枚のゴムマットの間に、吸音シートを貼り付けてみます。
今回使用する吸音シートは高圧ガス工業さんの商品。

屋根や雨樋の裏に張り付けるだけで雨音が圧倒的に静かになるという素晴らしい商品です。

この吸音シートの表裏にボンドを付けて2枚のゴムマットを接着してみます。

しっかりと接着して出来上がり。

後ほど実際に試してみようと思います。
扉の隙間を少なくする
部屋の扉を閉めると閉めないとでは騒音性が変わってきます。
チェロの音が近隣の耳に届くまでに、「しきり」がたくさんあればあるほど音量が少なくなることは明らかです。
必ずチェロを練習する部屋の扉は閉めるようにしましょう。
扉の四隅の隙間を密着させるとより効果的です。市販のスポンジ系の隙間テープ等で扉の隙間を密閉すると防音効果が高くなります。
ただし、ドアの隙間を完全に密閉してしまうと建築基準法の換気の必要性の問題が発生していますのでプロに相談してください。
真下の部屋でスマホの集音器で計測
まだ計測できていません。ごめんなさい。今後、計測予定です。今後の記事投稿にご期待ください!
床に直指し
フローリングに直接エンドピンを指して演奏
エンドピンストッパー
エンドピンストッパーにエンドピンを指して演奏
エンドピンストッパー + エンドピンのゴムカバー
エンドピンにゴムカバーを付けてエンドピンストッパーに置いて演奏
カスタムゴムマット + エンドピンストッパー + エンドピンのゴムカバー
カスタムゴムマットの上にエンドピンストッパーを置き、エンドピンにゴムを付け
ジムマット + カスタムゴムマット + エンドピンストッパー + エンドピンのゴムカバー
更にフローリングの上に、重いジム用のゴムマットを敷きます。2.5cmの厚みのあるジムマットは50cm四方で5kg程あります。

効果
上記の対策パターンをそれぞれ試しました。
下の階ではどのくらいの音が聞こえるか、対策毎に妻にチェックしてもらいました。
確かに効果はあります。しかし・・・
フル対策の状態(ジムマット + カスタムゴムマット + エンドピンストッパー + エンドピンのゴムカバー)で、「大きな音で聞こえるよ」とのこと。
うーん残念。
ただし対策前に比べて効果はゼロではなく、確実にわずかながら消音の効果があるようです。
特に低音を弾いた時の自分自身の足裏に響く振動がかなり少なくなっている気がするので対策を全くしないよりは良いように感じました。
しかし本質的に十分ではないようなので他の対策も模索します。
チェロの駒に取り付けるタイプの消音器で防音対策
エンドピンをフローリングに直置きよりは、自作のゴム板で対策をしたほうが、しないよりは良いでしょう。
となると消音効果で最も高いガジェット・ツールは、昔ながらのチェロ駒に取り付けるサイレンサーである。
結局、古くから普及しているツールが効果が高いようです。
サイレンサー(消音器)またはミュート(弱音器)と呼ばれる駒に取り付ける道具は、その重量により駒の振動を抑える役割をします。
重いチェロ用のサイレンサー・ミュートを駒に取り付けると、何もつけていない時よりも、弦が駒を震わせるためには多くの力が必要になり、結果として駒の振動がボディに伝わりにくくなります。
ボディの振動が抑えられると音量は小さくなるわけです。
練習用に音を小さくするためのミュート(サイレンサー)の商品としては「MyMute」や「ULTRA」「W Mutes Practice」「ARTINO」あたりが有名です。

どれも試しましたが、消音効果が一番高く感じたのは MyMute でした。2024年4月時点で価格は1万円弱で購入できます。

個人的には W Mutes Practice も結構音が小さくなりつつ音も素敵なので好きです。
音質への影響は少なからずありますので、サイレンサーを比較した記事も是非ご覧下さい。
ウルフを消す効果もあり
サイレンサー・ミュートに近い効果をもたらす、ウルフキラーやウルフエリミネーターという駒とテールピースの間の弦に取り付ける道具があります。
ほんのちょっとだけ駒や弦の重量を微妙に変えることでチェロ全体のバランスが変わりウルフの位置を変えたり抑える事ができます。
ウルフキラーは音量や音質が変わると言われますが、弦や駒付近の質量の違いはチェロの音に大きな影響を及ぼすということになりますね。
サイレンサーを取り付けるとウルフも消えて弾きかたにも影響が出てしまいそうでした。
演奏に変な癖が付かないように、特に初心者こそ大きな音を出して練習するのが上達への近道です。本当は大きい音を出して練習したい。
密閉と重量が防音にとって大きな要因
空気を伝う音への防音は「密閉」で遮断すると効果が高いようです。対して固体の物質を伝う振動音への防音は「重量」で遮断すると効果が高いと思われます。サイレンサー・ミュートは重量によって振動の伝わりかたを変える効果があるように、ものすごく重たいものを震わせるには大きな力がいることは想像できます。
空気を震わせないようにする対策(非推奨)
別記事にも書きましたが、Fホールを塞ぐという、チェロが可哀想な方法です。もしかしたら多方面から怒られそうです。みなさんは真似しないでください。

このFホール塞ぎ対策はかなりチェロの音が小さくなります。消音効果は抜群です。
チェロにダメージを与える可能性がありますのでご自身の責任でご判断ください。
というか、大きな音量を出したいという弦楽器の数百年の歴史で完成したこの姿形の偉大さがわかる結果となりました。弦楽器最高。チェロ最高。
まとめ
賃貸マンションには壁の厚さや建物の構造など様々な状況があるとは思いますが、チェロ防音対策として個人的に効果の高いと感じだ順にまとめます。
1. サイレンサー(消音器)またはFホール塞ぎ
2. 入口のドアや窓を密閉する(換気に注意!)
3. 床の振動対策(やるに越したことはない)
4. 壁の吸音(防音ではなく吸音なだけ)
このような順番でしょうか。
まずは手っ取り早くサイレンサーを装着しつつ、更に防音対策を環境に合わせて見つけていく。近隣トラブルになる前に最善を尽くすのがチェロを引き続ける上で大切。
※賃貸契約に楽器演奏不可と明記されている場合、演奏自体が賃貸契約に違反する可能性が高いです。賠償や賃貸契約解消につながる可能性もありますので現在の賃貸契約をしっかり確認してください。
ちゃぶ台返しですが、本来はめいいっぱい音を出せる環境で練習するのがチェロ上達の上ではベスト!
それぞれの環境に合わせて、永くチェロを楽しみましょう!
コメント